従業員が「うちの会社は倒産します」とデマを流したり、退職後の元社員が「前の会社のサービスは、当社が引き継ぎました」などの虚偽説明を取引先に行うことがあります。そして、真実ではないウソを信じた取引先からの信用を失い会社に損失が生じるなど、社員による不正行為が会社に被害を与えることがあります。こうした不正行為は、刑法第223条にて「信用毀損罪」および「偽計行妨害罪」として処罰も規定されています。
刑法233条(信用毀損及び業務妨害)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
虚偽情報の開示や伝達手段はさまざまですが、当ページではパソコンのフォレンジックを前提として解説します。
信用毀損罪・偽計業務妨害罪の罰則
- 刑法233条
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三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金
信用毀損・偽計業務妨害のデジタル証拠
フォレンジック調査では、次のようなデジタル証拠を見つけることになります。ただし、事件によって必要な証拠は変わりますので、ここに挙げたものが全てではありません。詳細は必ず弁護士にご相談下さい
- 虚偽の内容(メール本文や文書ファイルなど)
- 虚偽の伝達手段(メール送信・添付ファイル・ソーシャルメディア・SNS・グループウェア・チャットツール)
- 虚偽の伝達日時(メッセージ送信日時、虚偽文書作成日時、虚偽文書印刷日時)
- 虚偽性を認める根拠
- 対象者が虚偽性を認識していたことを示すもの
- 信用が毀損したことを認める根拠
- 信用毀損の程度を認める根拠
- 偽計の手段、経緯、履歴、および内容
- 業務妨害(被害)の状況、経緯、程度、被害金額、および内容
デジタル証拠の証明力を強くする
何をもって証拠とするか、あるいはどのようなデータを探し出せばデジタル証拠といえるのか。これらは不正調査のはじめの段階では、感覚的に分かりにくいと思いますので、ここで少しご説明します。例えば、ワード文書に「当社は倒産します」という主旨の虚偽情報があったとします。この場合、ワード文書データそのものは証拠になり得ます。ただし、それだけでは証拠として十分ではないと判断されることがあります。そのような時には、以下についてもフォレンジック調査で解明することによって、ワード文書を有力なデジタル証拠であると判断できる状況にもっていきます。
- ワード文書を印刷した日時を特定し、プリンタの印刷ログと照合する
- ワード文書がごみ箱に捨てられた日時を特定する
- ゴミ箱が空になった日時を特定する
- ワード文書が、私物のUSBメモリに転送された経緯を解明する
- ワード文書が、メールの添付ファイルとして送信された経緯を解明する
上記以外にもまだまだたくさんあります。しかし、全てを書くことは控えています。なぜならば、不正行為を行う人物が証拠隠滅のためのヒントとしてこのページの内容を活用する恐れがあるからです。そうした事情を考慮する必要もありますためご了承下さい。尚、当社の調査サービスをご利用いただく場合には、何が証拠として検出できうるかなども個別にお伝えしています。
フォレンジック調査は証拠データを復元するだけではありません
当社のサービスをご利用いただくお客様から、「証拠データを復元してくれるだけのサービスだと思っていました」と言われることがあります。データ復旧サービスの場合にはそれがメインです。しかし不正調査では、有効となり得るデジタル証拠の種類が数多くあります。1カ月以上解析してやっと事態を逆転できるような有力な証拠が見つかることもあります。コンピュータを使って解析しているにも関わらずです。これには理由があります。何を探せば良いかが、調査着手のタイミングでは、誰も分かっていないからです。そのため調査を進めながら、お客様・弁護士・当社の3者間で調査情報を共有しながら進めて行くことになります。
さいごに
コンピュータには詳しくない経営者の方。そして、パソコンが得意でない弁護士の方にも、デジタル証拠についてご説明を承りますので、被害の証拠が必要なときは、どうぞご遠慮なくお問い合わせ下さい。
なお、このページは弁護士ではないデジタルフォレンジックスの専門家が作成したものです。記載内容に法的な解釈および説明として誤っている箇所があることを否定しきれません。もしそのような箇所を見つけられました際には、ご指摘いただければありがたく存じます。直ちに修正するように致します。