Seagate社製HDD(ST2000DM001, ST3000DM001など)の故障へのご対応はリトライ案件も含め承っていますが、クランプリングにマジックペンで文字などが書き込まれている場合には、事前にプラッタがスピンドルモータから外す措置が実施されたと見込まれるため、データ復旧は極めて困難な状態であるとの推測に至らざるを得ません。このシリーズのHDDへのご対応は、他の製品とは大きく異なりますので、故障発生後のお取り扱いには充分ご注意ください。
ST2000DM001およびST3000DM001について、メディア表面検査装置(Optical Surface Analyzer)を用い、DLC層より上の最表層(潤滑剤)の膜厚を調べたところ、スライダ(ヘッド)と接触した状況が判明しました。このクラッシュによる潤滑層のダメージがスライダの正常浮上を妨げるため、いわゆるヘッド交換法のみでのデータ復旧は見込みにくいことがわかります。
概ね2012年以降に製造されたSeagate製HDDが該当します。製造年月日はHDDラベル面に記載のDateCodeから調べることができます。主なモデルは次のとおりです。これらは初期診断においても通電を伴う状態確認は出来る限り避ける方が望ましいため、特別な対応となります。
- ST500DM002
- ST1000DM003
- ST1500DL001
- ST2000DM001
- ST2000DL001
- ST2000DL003
- ST3000DM001
また、ご相談の多い2TBのHDDには型番とファームウェアバージョンが同じでも、組み込まれている磁気ディスク(プラッタ)の枚数が異なるHDDが存在します。このような部品構成や製品仕様のバラつぎがある理由を記載することは控えますが、データ復旧作業時には、これらの独特な性能に特化した処理を実施する方がより有効であることがわかります。
尚、肉眼ないし実体顕微鏡等では上の画像にあるような潤滑層の膜厚の分布を観察ないし計測することはできません。右上図は、鏡のようにキレイなディスクを調べた実際の結果です。※本物の測定結果画像です。
この画像はサーボ制御の不具合(左図)をファームウェアレベルで改善させた(右図)ときの実際のログの比較です。左はデータ復旧が従来法では非常に困難であることを示す出力で、右はそれをクリアしたことを意味しています。故障したハードディスクからデータを復旧するには、ファームウェアと磁気ディスク表面への適切な対処が重要です。